転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


353 発酵を覚えるのにはパン作りが一番なんだって



「えっと、錬金術の方も必要な技術が身についていると言うのであれば、この先の話をしても何の支障もないわね」

 あの後、ほんとに抽出ができるのかどうかを見せてあげるために、僕はこのお店にあった果物の種から油を抽出して見せてあげたんだよ。

 そしたらアマンダさんはまたびっくりした顔になったんだけど、それで僕がちゃんと錬金術も使えるって解ったから発酵と醸造の事を教えてくれるんだって。

「ちょっと待ってね、もう一度資料を確認するから」

 でも、ここからは教えてくれるアマンダさんも実際に使えるわけじゃないでしょ?

 間違えて教えちゃうと後で困っちゃうから、もういっぺん確認してから続きのお話をしてくれることになったんだ。


「うん、これでもう大丈夫。それじゃあ説明を始めるわね」

 アマンダさんはちょっとの間資料とにらめっこした後、どうやって僕にお話しするか決めたみたい。

 今度こそ本格的に発酵のお勉強を始めるよって僕の方を見たんだ。

「どうやらこの発酵って言う技術は、それそのものを覚えるまでに色々な工程を実際にこなして行かないと身に付けられないようね」

 アマンダさんが言うには、発酵ってのはいろんな技術の集合体みたいなものなんだって。

 だから、これを身に着けるには一個ずついろんな事をやっていって、それが全部終わると覚えることができる技術なんだってさ。

「それじゃあ、具体的に何をすればいいのかを説明するわよ」

 アマンダさんはそう言うと、僕に資料に書いてある覚え方を教え始めたんだ。

「これによると、まずは生地を発酵させて柔らかいパンを作るのが一番簡単だから、そこから始めるといいと書いてあるわね」

「柔らかいパンを作るの?」

「ええ、そうみたい。どうやら発酵させたパン生地を作る事で、必要なすべての工程をこなせるらしいわ」

 発酵スキルを使うといろんなものができるようになるんだけど、その中でもパンを作るのが一番簡単に基礎のお勉強ができるそうなんだって。

 だからまずはそこからお勉強しなきゃダメらしいんだ。

「えっと、この資料によると、どうやら私たちの周りに漂っている菌っていうものから必要なものを見つける事から始めるそうよ」

 その資料によると、まず最初に料理人の条件である材料の分量がなんとなく解ると言う技術と錬金術の解析を使って、パンを膨らませるために必要な付与する菌を空気中から見つけてそれを抽出する事から始めるんだって。

 でもさ、それにはちょっと問題があるんだ。

「ねぇ、アマンダさん。僕、その菌ってのがどんなのか知らないよ?」

 お料理を作る時に材料の分量がなんとなく解る技術って、実はそれがどんなものがよく解ってないとダメなんだよね。

 だってさ、もしお塩がしょっぱいって知らなかったら、どう使ったらいいか解んないでしょ?

 それとおんなじで、パンを膨らませる菌ってのが解んないとできないんだ。

 だから、それを探してって言われても無理なんだよね。

「ああ、それなら大丈夫よ。それについての説明がここに書かれているから」

 でもね、アマンダさんはそんな僕に、大丈夫だよって資料を見せてくれたんだ。

 そしたらね、そこには柔らかいパンを作るのに必要な菌の事が書いてあったんだよ。

「この資料によると私たちが普段食べているパンは、この世界に一番多くある乳酸菌って言うもので膨らんでいるらしいのよ。でもほら、ここに書いてある内容によると、帝都でお貴族様が食べているパンはまた違ったものが使われているみたいね」

「ほんとだ! 柔らかいパンを作るのに使うのは、麦とか果物についてる酵母って菌だよって書いてある」

 どうやら僕は、その酵母菌ってのを探さないとダメなんだって。

 でね、見せてもらった資料によると、用意した果物に錬金術の解析を使ってパンを膨らませる菌がどれかなって調べると、この酵母菌ってのが解るそうなんだ。

 そしたらそれを解析を使って空気中から見つけて抽出すれば、発酵のスキルを覚える条件のひとつ目がクリアできるんだってさ。

 と言う訳で、早速その酵母菌ってのを見つける作業だ。

 この内容は僕たちが来る前にアマンダさんが資料を読んで知ってたから、この酵母菌ってのが一番多い果物って書いてあったブドウを用意してくれてたんだよね。

 だから僕はそれに鑑定解析をかけみると、そこに酵母菌ってのを見つけることができたんだ。

「アマンダさん。酵母菌、あったよ!」

「そう。それじゃあ今度は、それと同じものが自分の周りになるのか、探して抽出してみて」

「うん! やってみるね」

 僕は言われた通り、自分の周りにある空気の中から酵母菌を探してみることに。

 でも、ここで使うのは鑑定解析じゃなくて錬金術の解析だ。

 何でかって言うと、これは料理人のスキルと一緒に使うものだから、もし鑑定解析でやってみて失敗したら嫌でしょ?

 だからここは、資料に書いてある通りやる事にしたんだ。

「あっ、あった! じゃあ、これを抽出してっと。できた!」

 そのおかげか、空気中から無事、酵母菌の抽出に成功!

「おめでとう。それじゃあそれを、この生地に付与してくれるかな?」

 アマンダさんに言われた通り、僕は錬金術の付与を使って酵母菌をこねた小麦粉に付与したんだ。

 でもね、その時に僕、解っちゃったんだ。

 今付与した分の酵母菌じゃちょびっとすぎて、この生地を柔らかいパンにできないって事が。

「ダメだよ、アマンダさん。だってこんだけだとちょびっとしかないから、柔らかいパンできないもん」

「ええ、そうね。でも、ここからが本当の発酵スキル習得なのよ」

 発酵スキルってのはね、実は必要な菌だけを魔力を使って増やすスキルなんだって。

 だからちょびっとだけ必要な菌を付与するだけで、それを必要な分にできるんだってさ。

「でも、ここからはちょと難しいみたいよ。この菌を付与した生地全体に、料理人の材料の分量が解る技術を使って魔力を与えなければいけないらしいから」

 お料理には普通、魔力なんか使わないでしょ?

 なのにここではポーションを作る時みたいに魔力を、それも料理人のスキルを使って調整しながら通さないとダメだから、とっても難しいんだってさ。

「そっか。うまくできるかなぁ?」

「大丈夫よ、失敗しても変わりの生地はまだあるもの」

「ねぇ、ルディーン。失敗しても大丈夫なら、とりあえず一度やってみたら? もしかしたら、一度で成功するかもしれないじゃないの」 

 そっか! もう酵母菌ってのは解ったんだから、これに失敗したら別のでもういっぺんやり直せばいいんだもんね。

 そう思った僕は、お母さんやアマンダさんの言う通り酵母菌を付与したパン生地に料理人のスキルを使うんだって思いながら魔力を通してみたんだよ。

 そしたらアマンダさんに言われた通り、酵母菌を増やすのはとっても難しくって……って、あれ? なんか、簡単にできちゃったんだけど?

 僕の隣には、本当にできるのかなぁ? って心配そうに見てるアマンダさん。

 そしてその反対には、僕に頑張れって顔に書いてあるのが解るくらい一生懸命なお顔をしてるお母さんいるんだもん。

 ……えっと、そんな風に見られてたら、簡単にできちゃったって言いにくいんだけどなぁ。

 そんな訳で僕はしばらくの間そのまんまにしてたんだけど、そしたらそのせいなのかお母さんが不安そうにアマンダさんに聞いたんだ。

「アマンダさん。あなたはさっきの説明でできると言ってましたけど、でもルディーンはこの通り何をしていいのか解らず困っているみたいですよ。確かにルディーンは頭のいい子ですけど8歳とまだ幼い子供なのですから、もう少しわかりやすく教えてあげた方がいいんじゃないですか?」

「あっ、えっと……私も、資料以上の情報は無い状態でして……すみません、配慮が足りませんでした」

 お話が難しすぎたんじゃないの? って言われたアマンダさんがちょっと困ったようにしてたら、お母さんが怒った顔になっちゃったんだよね。

 だからアマンダさんは、慌ててごめんなさいって。

 でも、それはアマンダさんが悪いんじゃなくって、僕がちゃんとできたよって言わなかったのが悪かったんだよね?

「お母さん、怒んないで。僕、やってみたらちゃんとできたもんだから、ほんとにこれでいいのかなぁ? って思ってただけなんだ。だから、アマンダさんは悪くないんだよ」

「そうなの、ルディーン?」

「うん。でもね、難しいって言ってたでしょ? だからほんとにこれでいいのか、解んないけどね」

 だから僕、一生懸命お母さんにアマンダさんは悪くないんだよって教えてあげたんだ。

 そしたらちゃんと解ってくれたみたい。

「アマンダさん。どうもすみません。教えてもらっている立場なのに、こちらの早とちりで」

「いえいえ、こちらこそ、ルディーン君がまだ子供だと言う認識が足りず、説明不足で困惑させたみたいで」

 でもそのせいでお母さんとアマンダさんは、ちょっとの間ふたりしてごめんなさいしあう事になっちゃったんだ。


 資料には難しいと書いてありましたが、そもそもルディーン君は魔力操作に関して言うと人並外れた才能を発揮してきてますよね?

 なので当然この発酵スキル習得において一番の難関と言えるこの部分でさえも簡単にこなしてしまいました。

 まぁ難しいと言ってもしょせん自分の魔力を使った作業ですからね。ルディーン君の場合、普通なら熟練でも難しい他人の魔力を動かすと言う作業でさえ4歳の頃からできたのですから、失敗するわけないですよねw


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